2027年に設立70周年を迎える、有磯運輸株式会社。

「真心こめておとどけします」を合言葉に、永きにわたって氷見市と富山県の経済を、物流の面から支えてまいりました。

前職の金融機関を経て2025年に入社し、先代から事業を引き継いで四代目の代表に就任した青野邦明社長に、これまでの歩みとこれから、そして一緒に働く仲間への思いを聞きました。

やさしい時間が流れる会社

入社して、まず驚いたのは、社内に流れる空気だったといいます。営業の出身である社長は、運送業界には人と接するのが苦手な方が多いのではと思い描いていました。

「その印象とは、180度違っていました。落ち着いた方が多くて、声を荒げるような場面を見たことがありません。むしろ、おしゃべりが好きで、気配り上手な人が多いんです。運転中は一人でも、道路や納入先の状況は刻々と変わっていきます。その情報をつかむ力の高さが、そのまま会話の力につながっているのだと気づきました。私が入社してから、保険を使うような事故は一件も起きていないんですよ。」

「のびのびプレイ」という考え方

事故が少ない理由をうかがうと、社長は「こころの問題なんです」と、おだやかに話してくれました。

「ミスの原因を突き詰めていくと、仕組みの問題と、取り組む姿勢の問題に行き着きます。仕事に真剣に向き合うには、それだけのこころの余裕が必要なんですね。ですから弊社では、失敗を叱ることはしません。小さな故障や不具合は、どうしても確率的に起きてしまうものですし、責めても解決にはつながりませんから。叱られるかもしれないと思えば、事故の前ぶれであるヒヤリハットも報告されなくなってしまいます。以前あった無事故手当の仕組みも、2025年度になくしました。萎縮は、こころの余裕を奪ってしまいます。ようは、のびのびプレイなんです。」

もちろん、放任というわけではありません。法令順守は最も大切な方針のひとつであり、ドライバーが過度に気を張らなくても自然とルールを守れる、そんな仕組みづくりを進めています。

社内には和やかな雰囲気が流れている

仕組みで、現場を支える

自動点呼システムがもたらした変化

その第一歩が、2025年12月に導入した自動点呼システムです。アルコールの検知に加えて、血圧と体温を測り、その結果がクラウドに自動で記録されていきます。社長は、この仕組みがもたらした変化を、うれしそうに語ってくれました。

「紙の健康データは、これまで監査のときや、事故が起きたときの説明にしか使われていませんでした。それが、数値の移り変わりをリアルタイムで見られるようになったんです。血圧の高いドライバーに対しその都度、声掛けを実施、継続的に通院をすすめました。結果、受診していただき正常な値まで戻った方もいました。気になる日にはひと声かける。そうした積み重ねで、ドライバーとの距離が、ぐっと縮まりました。」

新しく導入した自動点呼システム

就任から取り組んできた仕組みづくり

  • 自動点呼システムの導入:アルコール・血圧・体温の記録をデジタルで一元管理
  • 健康データの活用:数値の変化に応じた通院のおすすめと、日々の声かけ
  • 手当制度の見直し:事故時の罰則的な手当をなくし、安心して報告できる風土へ
  • デジタルタコグラフの導入:安全運転とドライバーの負担軽減を両立する仕組みを導入予定(2026年10月)

デジタルタコグラフには、ドライブレコーダーや動態監視の機能も備わっており、万が一の事故や故障の際にも、事務所から的確にサポートできます。こうした仕組みが、ドライバーの心理的な安全を支えていく。それが社長の考えです。

中部地区でいちばんの運送関連商社へ

就任にあたって、社長はご自身が70歳になる、およそ18年後を見据えた目標を掲げました。

「目標は『中部地区でいちばんの運送関連商社になる』ことです。その土台となる経営理念は、誠実、利他、繁栄。高すぎる目標だとよく言われます。でも、現実が目標を超えることは絶対にありません。それなら、高いほうがいいんです。あえて運送業者ではなく、商社としたことにも理由があります。」

DX支援という商機

前職でシステム部門にいた社長は、入社してすぐにDXを最も大切な課題のひとつに据えました。業界では、個々のIT化こそ進んでいるものの、全体としての最適化にはまだ至っていない。そこに大きな商機があると見ています。

もうひとつの柱が、中小企業を対象とした3PLです。中規模の事業者から、中ロットの物量を束ねることで成り立つ仕組みを、これから仲間とともにつくっていきたいといいます。

ゴールへの四つのステップ

  • 第1フェーズ:実運送事業の強化。土台となるドライバー人材を、いま最優先で募集しています
  • 第2フェーズ:DX支援を本格化し、運送で培った知見を地域の企業へ
  • 第3フェーズ:物流に関わるあらゆる変革を支える、商社としての機能を拡充
  • 第4フェーズ:これまでの事業を束ね、全国へと展開

氷見ブルーとともに

氷見への思いは、地域ブランド「氷見ブルー」との連携にもあらわれています。

「氷見ブルーは色がコンセプトなので、分野を問わず、どなたでも参加できます。そこに強く共感しました。」

具体的な取り組みとして、8月に導入予定の新しいトラックには、氷見ブルーと有磯運輸の新しいロゴを描く計画が進んでいます。白を基調にした車体に、鮮やかな青のロゴが映えます。関東や中京、関西を走る長距離便が、走る広告塔として氷見の魅力を運んでいきます。

社長が見据えているのは、運送事業を起点とした、氷見そのものの活性化です。

普段は社長が自ら営業に回る

ともに働く仲間へ

有磯運輸の採用の方針は、とてもシンプルです。長く、この会社を好きになって働いてくださる方を、何よりも大切にしています。「人材で勝つ」を戦略に掲げているからです。

「やさしい時間が流れる会社です。人にも、お客様にも、荷物にも、トラックにも、やさしくできる方に来ていただきたい。最優先はドライバーの人材ですが、DX支援や商社化を担ってくださる方も、良いご縁があれば前倒しでお迎えしたいと思っています。運送事業は、日本経済の血液です。物流を起点に、氷見から日本を、そして世界を、一緒に盛り上げていきましょう。」

氷見から物流の可能性を広げようとする社長の言葉には、おだやかさの奥に、静かな決意がにじんでいました。